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 何故、照明写真は良く写らないのか
 運転免許証の写真が、気に入らない写り方をする理由には、様々な要素
がある。
ひとつには、人間は基本的にあらゆるものを動画で見ており、その総合が
印象として残る。写真は、一場面のみを表現する。総合イメージに近くな
いと、違和感が生じる。
すくなくとも自分の顔は、鏡越しではあるにせよ、毎日見ており、自分の
イメージが出来上がっているのだが、証明写真、特に運転免許証の場合、
公安委員会や警察で一発撮りが多い。しかも、カメラ上部に点光源となる
フラッシュが一灯、取り付けてある。正面上部からのスポット状の硬い光
は、顔正面をテカらせる。その反射を抑えるために暗めの露出設定になっ
ているようだが、その分、ただでさえ、硬い影となっている顎や鼻の下の
影は更にくっきりとが出る。
撮られることへの緊張の表情が、より、こわばったようにライティングセ
ットされているのが証明写真である。
仮に日常生活が、このような光線状態のなか、緊張した表情ばかりの顔を
見慣れていれば特別証明写真に不満をもつことは無いだろう。それは、証
明写真のような顔が「標準化されたイメージ」として認識されるからだ。


 しかし、実際には、もっと柔かい照明環境で表情もいろいろある生活の
中でイメージ化した自分の顔に対し、証明写真は、非日常の光線状態の中
での緊張した自分の顔であり、おおよそ見慣れない自分の顔を演出してい
るのである。しかし、証明写真は本人であることが分かれば良いのであり
目を瞑ったり、髪がかかって顔が分からないなどの、支障が無ければ良い
訳で写りの良し悪しは二の次なのである。


 一般的な広告の世界では、当然、このようなライティングや撮り方はしない。
警察や公安委員会が、もっとキレイに写るために公費を費やすということ
は、組織の性格上ありえないことだと思う。

写真の撮り様で随分と印象が変わることを理解していただきたい。