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 望遠効果・広角効果
 写真の印象付け要素にレンズの焦点距離特性がある。最近のコンパクト
カメラもズームレンズが標準装備になり、特に望遠の方は、そこそこの長
さを持っている。

 単純に言えば、遠くの被写体を引き寄せる場合に「望遠」を使い、より
広く写し込みたい場合に「広角」が使われる。

では、同じ被写体、例えば、画面いっぱいに人物を収めた場合広角では、
被写体に近づき、望遠では離れることで同じ大きさになる。しかし、その
被写体が広い壁のすぐ前に立っていない限り画面全体のイメージはかなり
違ったものになってくる。


 被写体を中心にカメラと被写体、被写体と背景、三者を真横から見た場
合のカメラと被写体の距離に対し、被写体と背景の距離の比率が、写真の
印象を大きく変えることになる。
広角は被写体に近づく分、背景の固体が小さくなり広い範囲が写るが、望
遠は、被写体から離れる分、背景の固体が大きくなり写る範囲も狭くなる。
風景で例えるなら、羽田空港から富士山を見た場合、手前に箱根や丹沢が
あってその背後にそびえる富士の山容を見ることができる。
しかし、熱海付近では、箱根山に遮られ富士山を見ることは出来ない。富
士山に近づけば近づくほど、手前の山が対比で大きくなり富士山を隠すよ
うになる。
つまり、手前のものを大きく、背後を小さくするのが、広角効果でもある。
望遠は、特に超望遠と呼ばれる長焦点レンズで緩やかな坂道を正面から撮
った場合、印象以上に急勾配の印象になる。
これは、広角と逆に遠近感が少なくなる分、背景が大きく写しこまれ、い
わゆる「圧縮効果」が起きるからである。
車のルームミラーにワイドタイプをつけるとかなりの交通量でも後続の車
の列は、車間距離があいているように見える。
これを望遠でみたら、後続車は全て車間距離をとらず恐ろしくなってしま
うであろう。
広角で撮っても画面中心に向けてトリミングしていけば、望遠と同じ効果
が得られる。このように同じ情景を撮ってもレンズの違いにより印象が、
かなり違ってくるものであり、使い方によっては、印象のトリックが可能
とも言えよう。