ユダヤ人からみた東條


 ルーズベルトはユダヤ人であり、ユダヤ人の大敵であるナチスドイツと同盟にある
日本はユダヤ人の敵ということになる。歴史をみるとそんな図式が浮かび上がるが、
現実はそんな単純なものではない。
 ヒトラー著「わが闘争」では、ユダヤ人は“文明破壊の元凶”と定義付け、また、その
ユダヤ人がアジアで台頭する“日本”を包囲するためのプロパガンダが展開されてい
ることが記されていた。
 イスラエル建国以前でかつ、世界に点在するユダヤ人を一括りで考えることは無理
があり、全てのユダヤ人が“反日的”であったとは考え難い。
 ヒトラーが指す「ユダヤ人」とは、いわゆる「ロスチャイルド」等の世界に影響を与える
巨大資本で、反日プロパガンダについては、「わが闘争」の時期とは一致しないかもし
れないが、極東の富豪「サッスーン」のような存在を言っているものかもしれない。
「三国同盟」はそのような高階級ユダヤ人にとって格好の日本攻撃材料になった、と
いうことだ。
 とはいえ、日本にとっての三国同盟は、防共協定でで“反ユダヤ”を掲げるナチスの
民族主義とは一線を画するものである。むしろ、大戦前から日本は米英以上にナチス
の“反ユダヤ”を否定している。

 第二次大戦前、ヒトラーを気兼ねしてか、米・英までもユダヤ人の入国を制限した。
そのような世界情勢の中、日本軍が警備する上海租界だけは唯一、ビザなしで入国
でき、ヨーロッパを追われたユダヤ人が中国や満州へ逃れてきた。ドイツは同盟国
である日本に対し、ユダヤ人の排除を要求したり、日本の将校がユダヤ人集会に参
加したことを抗議しているが、東條は、それを握り潰している。
 映画「シンドラーのリスト」でユダヤ人を救出した人物がクローズアップされた。その
影響で日本人の間では、杉原千畝が知られるようになったが、軍人の樋口季一郎も
ユダヤ人の間では、有名である。そして、その上司であった東条英機は、その姿勢を
理解し、ドイツの抗議を無きものとした。日本人にはあまり知られていないが、そのこ
と知る、ユダヤ人からは「英雄」とされていることも事実である。