樋泉克夫教授コラム

 【知道中国 771回】            一ニ・六・三〇

    ――嗚呼、確乎不動で高邁無辺のウソ八百

 芒市政府庁舎本館の吹き抜けになった玄関ホールに立つと、「政府自らの建設を推進し、政府工作の改革を効果的に促進し、行政機関の作風を好転させ、行政効率を高める」ことを目指そうという「四項制度」が誇らしげに掲げられていた。

 先ず「法治政府四項制度」は「重要国有資産処理監査制度/重要資源開発利用項目監査制度/重要投資項目監査・決算制度/重要財政追加予算・支出監査制度」。「責任政府四項制度」は「行政問責制度/服務承諾制度/上司問責制度/期間内完結制度」。「陽光政府四項制度」なる項目があるが、この「陽光政府」の意味が判らない。「重要施策公聴制度/重要項目公示制度/重点工作通報制度/政務情報審査制度」なる内容細目から判断して、「陽光政府」とは高い透明性と住民本意の政策を進める政府ということのようだ。最後が「功能政府四項制度」で、「行政成果点検制度/行政コスト削減制度/行政行為監督制度/行政能力向上制度」となっている。

 この方針が徹底され市政府関係者全員が粉骨砕身と、いくわけがない。だからこそ、案の定、その隣に全員が拳々服膺すべき2種類の細則が別に掲げられているわけだ。

 先ず「行政問責事項」。「こんなことをすると責任を問われ罰せられるぞ」といったところだろう。「(一)命令事項を執行せず、禁止事項を行う。(二)独断専行し、施策を誤る。(三)職権を濫用し、違法な行政を進める。(四)ダラダラ仕事を引き延ばし、責任を転嫁する。(五)積極的でなく、日々を凡庸無為に送る。(六)上司を騙し部下にウソをつき、デタラメに振る舞う。(七)執務態度は冷酷で、仕事ぶりは粗暴である。(八)公費を浪費し、遊興に明け暮れる。(九)業務を秘密裏に処理して、監督逃れを図る。(十)監査に努めず、いい加減に処理する」の10項目である。

 続いて「国家工作人員十条禁令」は、「一、本来の職務を遂行せず、職務を疎かにすることは厳禁。二、ウソで固め、上司を騙し部下を誑かし、業務を執行せず、引き伸ばすことは厳禁。三、物資購入の際に横流し、公共工事入札の際に手心を加えることは厳禁。四、職務権限をタテに相手業者に金銭、食事を強要することは厳禁。五、賭博に加わることは厳禁。六、公共の場での麻雀は厳禁。七、飲酒でイザコザを起こし、業務に支障をきたすことは厳禁。八、勤務時間中に本来業務を怠ることは厳禁。九、公金を高額遊興費に流用することを厳禁。十、如何なる理由があれ薬物の使用を厳禁」と10項目だが、特に厳禁とせざるをえないほどに横行している行為なのだ。

 上に政策あれば下に対策あり。傲慢無比で理不尽極まりない独裁政権に対抗する中国庶民の智慧だが、市政府のなかでも、当然ながら十二分に通用する。市政府のエライさんが上から「四項制度」などという出来もしない方針を麗々しく並べ立てて働けというなら、「イイデスヨ、コチトラは仕事をせずに徹底して自己チューでいきますよ」である。

 1年365日、朝から晩まで仕事をしない。適当に口実をつけては仕事をサボり引き伸ばす。公共事業入札に手心を加える。出入り業者に金銭や供応を強要する。賭博や職場での麻雀に興ずる。業務に支障をきたすほどにタダ酒を鯨飲する。勤務時間を守らない。公金で遊びまくる。薬物に慣れ親しむ――「問責」「厳禁」なんて屁のカッパ、蛙の面に・・・。

 ところで玄関ホール中央の大きな衝立には毛沢東の書体のままに大きく「為人民服務 毛沢東」と・・・そうか、市政府関係者全員は毛沢東の教えを活学活用してるんだ。《QED》