【知道中国 472回】       一〇・十・念九

      ――最近のタイと雲南・広西

 やや旧聞に属するが、2009年6月、タイ高等教育委員会事務室と駐南寧タイ総領事館は広西チワン族自治区教育庁と合同で、同自治区首府の南寧においてタイへの留学生増大を目指し「2009泰国教育展曁研討会(タイ教育展・学術研究討論会)」を行った。じつは同自治区内にある18校の高等教育機関でタイ語教育が行われており、5000人以上の学部・大学院生がタイ語を学ぶなど、タイ語学習者が全国最多といわれている。

 ヴェトナムと国境を接する広西チワン族自治区の南寧は、西隣の雲南省省都・昆明と並んで中国の東南アジア進出の最前線基地だ。ヴェトナムとラオス両国の党・政府幹部の中に、南寧留学組がチラホラと見られる。おそらく今後、その数を増すことだろう。

 南寧での「2009泰国教育展曁研討会」から1年4ヵ月後の今(10)年10月初、駐昆明タイ総領事館がタイで学ぶ中国人留学生は01年に較べ10倍の9000人に達し、中国がタイへの外国人留学生最多送り出し国になったと発表した。タイで学ぶ留学生の出身国は、多い順に中国、ミャンマー、ヴェトナム、アメリカ、ラオスで、タイの44ヶ所の大学で主に企業管理、タイ語、市場管理、国際ビジネス、タイ語などを学んでいる。同領事館の陳維欽領事によれば、タイ中両国関係の拡大、留学に関する費用の安さ、手続きの簡便さなどタイへの中国人留学生増加の大きな要因だろうと語っている。さらに今年8月に行われた中国=ASEAN教育大臣円卓会議では、両国は相手国で取得した学位を相互に承認する協定を結び、教育面における両国の密なる関係を内外に印象づけた。

 バンコクと昆明とを結ぶ全長1863キロの公路は08年12月に完成し、雲南はタイ経由の大動脈でASEANと結ばれたのだ。今年9月末、タイ・中・ラオスの3ヶ国はメコン流域における物流促進に関する協定を結び、タイ側のチェンコンとメコン川を挟んだ対岸のラオス側のフエサイ、ラオス側のモーティンと雲南側の憨磨との両国境関門での交易を活発化する方針で一致した。陸路でチェンコンまで運ばれたモノやヒトはメコン川を渡れば、後は陸路をノンストップで昆明へ。さらに中国全土へ。もちろん逆の流れも活発化する。

 そして10月26日のタイ国会だ。上下両院合同会議が開かれ、長年の懸案だった列車事業発展に関するタイ中両国合作計画は延々9時間の審議を経て採決となり、賛成295票、反対10票、棄権82票。その結果、バンコクを起点にチェンマイ(北部)、ノーンカイ(北東北部)、ウボンラーチャターニー(東東北部)、ラヨーン(東部)、ペダンペサール(南部)を結ぶ5路線の整備・建設にゴーサインがでたことになる。最短路線のバンコク=ラヨーン線からの着工となる模様で、当初事業費は1700億バーツ(4600億円強)とのこと。

 表決結果に満足気味の交通大臣は、4年以内に時速100キロの列車が走ることになると語った後、記者からの「なぜ中国なのか。なぜ他国と合作しないのか」との質問に対し、「中国からの要請があったからだ。中国から提案されたからこそ、両国の交渉が進捗した」と応えていたが、中国からの強い働きかけがあったからこそ、ということだろう。

 現科技大臣のウィーラチャイ(李天文)が首相府大臣だった昨年11月、中国と合作によるタイの国内鉄道の整備・建設計画をぶち上げてから1年余。鉄道を軸とする物流網は、漢民族の“熱帯への進軍”に歩調を合わせるかのように整備・建設が進む。次に注目すべきは、どの企業が工事を受注するのか。まさかウィーラチャイ関連なんてこと・・・。  《QED》