【知道中国 461回】       一〇・十・初七

     ――あの頃の厳格な基準に照らせば、君たちに党員資格はないはずだ

     『党的基礎知識』(《党的基礎知識》編写組 上海人民出版社 1974年)

 文革原理主義の四人組が国政全般に猛威を振るい、彼らの身勝手極まりない政治が猖獗を極めていた頃、この本は出版されている。だから、この本を貫くのは「四人組式原理主義」とでも呼ぶべき滑稽で純粋で厳格で極端で先鋭化した考えだ。それもそのはず、今とは全く異なって「中国共産党はプロレタリア階級の政党であり、プロレタリア階級の先鋒隊である」ことが、何の疑いもなく胸を張って広言できた時代だったわけですから。

 この本は、「マルクス主義においては、政党は階級闘争の産物であり、同時に階級闘争の手段であ」り、「一切の政党が鮮明なる階級性を具えないなどということはありえない」。そこで「世界において、これまで階級を超越した政党などありえなかっただけでなく、特定の階級の利益を代表しないような“全民党”など存在したためしはない」と政党を規定した後、「中国共産党はプロレタリア階級の政党であり、マルクス・レーニン主義の革命理論と革命の風格に拠って建設されたプロレタリア階級の先鋒隊である」。「中国共産党がプロレタリア階級の政党であるということは、我が党がプロレタリア階級の特徴と優れた点を集中的に体現しているからである。プロレタリア階級は人類史において最も偉大なる階級であり、思想・政治・力量のうえからも最も強大な革命階級であり、新しい生産力の代表であり、最も先進的な経済の形式と連係している。旧社会において、プロレタリア階級は最も過酷に搾取され、深刻極まりない圧迫を余儀なくされ、一切を所有することなく、生産活動にかかわる凡ての手段を持つことを許されず、自らの肉体=労働力のみを売却することによってのみ生を維持することが可能であった」と、高らかに宣言する。

 以上の基本認識に沿って、党の指導思想、党の基本綱領と最終目的、党の基本路線、党の一元的指導、党の民主集中制、党の規律、党の三大作風、プロレタリア革命事業の後継者養成、党の基本組織の任務など14章にわたって「党的基礎知識」を青年層に教育すべく懇切丁寧に詳説している。とはいうものの実態はタテマエだらけの、出来もしない、ウソ八百満載の“超公式的見解”の羅列。読み進むにしたがって腹立たしくなるが、「十三 入党条件と入党手続き」の章で思わず腹を抱えて笑ってしまった。抱腹絶倒、いや悶絶デス。

 「年齢が満18歳の中国の労働者、貧農、下層中農、革命的軍人とその他の革命分子で党の規約を認め、党の組織に参加し、その中で積極的に工作を進め、党の決議を厳格に実行し、党の規律を遵守し、党費を納める者は、凡て中国共産党員になりうる」というのが、当時の「我が党の性質と共産主義の実現を目指す歴史的任務から決定された」ところの党規約だそうだ。それはそれで厳格極まりない定めだろうが、これを強欲資本主義を率先垂範する現在の共産党と比較した場合、まさに“名存実亡”としか形容のしようがない。

 だいいち胡錦濤以下、8000万人近い現在の共産党員のなかに、「労働者、貧農、下層中農、革命的軍人とその他の革命分子」が生存できる空間はあるのか。「党の規約を認め、党の組織に参加し、その中で積極的に工作を進め、党の決議を厳格に実行し、党の規律を遵守し、党費を納める者」が何人いるのか。ましてや「中国共産党がプロレタリア階級の政党であるということは、我が党がプロレタリア階級の特徴と優れた点を集中的に体現しているから」と胸を張ることのできる党員はいるのか。慾を言ったら切りがありません・・・が。  《QED》