【知道中国 454回】      一〇・九・念五

     ――この世界は・・・仁人君子VS奸邪凶悪奴才小人である

     『中國比小説更離奇』(鐘祖康 玉山社 2009年)

 痛快極まりない本である。なにが痛快といって、開巻第1頁に置かれた「極めて奇怪なことは、中国人は万事に亘って礼を以って根本とするが、じつは世界で最も人を欺く民族である」との一文だ。モンテスキューの『法の精神』からの引用したとか。

 著者は同じ中国人ながら、いや中国人であればこそだろう。ともかくも中国政府と中国人に対する徹底した批判を展開する。そのいくつかを思いつくままに拾ってみると、「中国人が如何に邪悪であるかを記した歴史的記述の10のうちの9は信じられる。 

 「(漢字8億文字で書かれた)『四庫全書』の全文を調べると、『人相食(人、相イニ食ス)』が1008回、『易子而食(子ヲ易エテ食ス)』が236回現れる。詳しく読むと凡てが事実であり、修辞学上の誇張した表現ではないことが判る。そのうえ食べるだけではなく、公然と販売しているではないか。

「中国の統治者の政治宣伝は西洋人の遥かに上をゆく。加えるに中国では、(奴隷として扱われる)農民と奴隷の主人の大部分が同じく黄色い肌と黒い髪の漢人だ。そこで、中国において農民が家畜として遇されていることが『人種差別』『民族浄化』といった類の極めて重大な人権問題であるにもかかわらず、国際社会で一向に問題視されないのだ。

 「(最新の研究成果によれば凡ての人類はアフリカを起源とするのだが)中国大陸だけが政治的要因から、この世界的な研究成果を無視したままだ。その第1の理由は、中国政府が中国の学術界を厳格に規制・操作し、彼らに多大な政治的任務を負わせていること。中国人の起源問題は、その典型といえる。第2は大部分の中国の学者が熱狂的で盲目的な大漢、あるいは大中国主義者で占められていること。学者ではなくアジテーターだ。

 「中国人は世界の広さを知らず、中国こそが絶対であり、凡ての外国人は野蛮で、中国を王と崇めていると思い込んでいる。そこで、中国の基準で世界に対応しようとする。

「さらに許し難いのは中共の主張する民族主義が極めて極端で狭隘であり、その内実を政府が任意に定めるばかりか、デタラメ極まりない基礎の上に成り立っている。つまり中国人の民族主義は、中国人の始祖は中国の大地から生まれたという甚だナンセンスで科学的根拠が皆無な基盤に根ざしているとうことだ。

 「中国人の起源は中国にはないという科学的に証明された厳然たる事実は、笑うべきことに中共当局のみならず多くの中国民族主義者にとっては断固として受け入れ難いことなのだ。民族主義こそ、中共統治者という溺れる者が摘む最後のワラとなっている。

 「アフリカで生まれた人類は何万年の時を経て進化して優れて文明国家の仁人君子となり、退化して中国に奸邪凶悪奴才小人を大増産してしまったことを思うと憂鬱極まりなく、中国人としては暗澹たる自己否定の深淵に陥ってしまう」

 かくて著者は、古来中国の英雄豪傑が成功した秘訣は「臉皮要厚(ツラの皮を厚く)」し、「心要黒(より邪な心)」を持ったからだ、との結論に達する。

 確かに、著者の主張には熱烈な拍手を送りたいし、「臉皮要厚」「心要黒」の説は大いに納得できる。だが著者もまた中国人であればこそ「臉皮要厚」「心要黒」という生き方をしてはいないのかとの疑問が湧く。眉にツバして、この本を読み返すべきだろう・・・か。  《QED》