【知道中国 333回】 十・一・初七
――僕らは無邪気で残酷だい・・・政敵苛めは楽しいぞ!

 『我写児歌来参戦』(北京西北四小学紅小兵詩歌選 人民文学出版社 1974年)

 この本の巻頭に置かれた人民文学出版社編輯部の「出版説明」によれば、「北京西北四小学校の広範な少年少女は党中央と毛主席の偉大な呼びかけに応じ、積極的に批林批孔運動に馳せ参じた。彼らは革命の小将軍の気高い志を持って運動の深化と発展に緊密に呼応し、マルクス主義の観点に立って勇躍として革命の新しい歌を作り、それを武器にして、林彪と孔子に向かって華々しく戦端を開き、悦ぶべき戦禍を挙げた。いま、小将軍の創作のなかから30首ほどを選び出し、この児歌(童謡)集を編んだ」とのこと。

 この説明の真偽のほどはさて置き、先ずは「党中央と毛主席の偉大な呼びかけに応じ」たといわれる子供たちの妙に大人じみている“こまっちゃくれた作品”をみておこう。

 「偉大な主席の一声で、批林批孔の幕開く。工農兵が立ち上がり、革命の火は燃え盛る。批林批孔が高まって、灼熱の鉄迸る。歴史を後に戻すまい、赤旗高く掲げよう。批林批孔が高まって、田圃や畑は燃え盛る。林彪孔子許すまじ、天まで届け雄叫びよ。批林批孔が高まって、解放軍は立ち上がる。手にした銃を握り締め、ハガネのような強い意志。批林批孔が高まって、紅小兵(ボクたち)だって参戦だい。手にした鉛筆武器にして、林彪孔子の悪暴く。主席が巨きな手を振れば、全国人民歓呼する。批林批孔の闘いは、勝利の時まで続くのだ」(「批林批孔大開展」)

 「赤いレンガの塀があり、青いレンガの塀がある。紅小兵(僕ら)の心は燃えに燃え、塀に思いを貼りつくす。マンガもあれば文もあり、すべてが槍と刀だい。林彪アホーで孔孟バカ、革命の火は赤々と。赤や青のレンガの塀は、ぜーんぶ僕らの戦場さ」(「処処都是好戦場」)

 「平津戦役いざ開く、人民軍隊出動だ。弱虫林彪怖気づき、全国解放邪魔ばかり。右派林彪は逆賊で、浅知恵悪知恵悪だくみ。“常勝将軍”笑わせる、野心ばかりの大バカだ」(「林彪是個大壊蛋」)

 「鎌と鞄を背に負って、大地はすべて足の下。胸張り志気はいや高く、この身を捧げる農業に。父母の足下を離れても、ウソ臭野郎を許さない。輝く道をボクは行き、世界の果てまで赤旗だ」(「立志務農把根扎」) 

 「紅小兵の意気盛ん、小さな体に怒り充つ。筆を揮って批判して、林彪ヤローの悪暴け。階級闘争忘れずに、修正主義を許すまじ。主席の思想日々学び、紅小兵は勁くなる」(「紅小兵越煉越堅強」)

 さらに「出版説明」は、これらの歌は「プロレタリア文化大革命、プロレタリア教育革命、知識青年が農山村に向かう運動という社会主義の新しい動きを高らかに歌いあげ、プロレタリア革命事業の継承者たらんとする紅小兵の崇高な理想と批林批孔運動のなかで急速に鍛えあげられた溌剌とした精神を反映している。すべてが、我われが重視すべきものだ」と煽てあげ、子供までが毛沢東に従い批林批孔運動を展開していると“演出”する。

 文革開始当初、考察隊を率い現地入りした大宅壮一は文革を目撃し「ジャリ革命・ガキ革命」と評していたが、この本に納められた童謡を改めて読み直すと、確かに片腹痛さが募る。中国では子供の頃から遊びは専ら政治だった・・・すべての道は現在に。  《QED》