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良いレンズではある   スーパージンマー210mmHM

supersymmar 210mmF5.6HM
 ドイツ、シュナイダー製大判用レンズ。シュナイダーは大判サイズが主流だが、ハッセルのズーム
レンズである「バリオゴン」やローライでツアイスのプラナーの後にクセノンを装着し、より高い評価
を得ている。このレンズは、大判レンズの中では“ワイド”と呼ばれる部類に入る。大判でのワイドは
一般的な広角レンズと幾分か違う意味で包括角度の広さを意味し、例えば、大判ではコンパクト設
計であるテッサータイプで300mmレンズと比較してワイドの300mmは広い包括角度から、大きな
イメージサークルが得られる。シュナイダーではワイドタイプに“ジンマー”という名称でラインナップし
ているが、その中でもスーパージンマーは、殊更大きなイメージサークルを誇り、更に後発の非球面
を採用したスーパージンマーはSW(スーパーワイド)に匹敵する。さて、このレンズを購入した動機
は、8×10を導入したことにより8×10用広角レンズに適していると判断したからである。210mm
という焦点距離は、35mmで換算すると、4×5に装着すると60mmくらいの中焦点で8×10ならば
30mmくらいの広角になる。そこで、8×10用に標準360mmとこの210mmを揃えた。勿論、両方
とも4×5でも使えるのが大判の利点である。
 しかし、このレンズを購入するにあたりもうひとつの理由があった。それは、このレンズが出る前に、
ニコンからAMと呼ばれる大判レンズが発売された。このレンズは、等倍設計となっており、近接撮影
で、殊、120mmは抜群の性能を持っていた。それより長い210mmも120には及ばないものの、従
来の描写の概念を塗り替えるもので、宝石の撮影では、ダイヤのカッティングが見事に再現された。
そこで、後に発売された、スーパージンマーについてプロショップで確認したところ、ニコンAMの対抗
機種とのことでAM同様にEDガラスを使っているということであった。
ただ、AMはその名、AM=アポクロマートのようにEDガラスだけではなく、レンズ構成から近接撮影向けに設計されており、近接以外では使えな
いものである。大判は通常、レンズ構成が変化するインターナルフォーカス構造を持っていないので、最適な撮影距離が設計上存在する。このス
ーパージンマーがいかなる距離を想定しているのか分からないことから、この製品を扱う本庄の営業に確認したところ、通常のジンマーに対し、E
Dガラスを採用し、全般に適した設計とのこと。幾分、疑わしい回答であるが、明確にAMニッコーるより「良い」と発言した。営業の言をどこまで信じ
るか、ということになるが、8×10の広角要素もあったことから注文した。これに合わせ、今まで近接用に使用していたフジノンAを売却した。
ところが、現物が来て早速使ってみたら、通常撮影は抜群の性能であったが、近接では、結像が甘い。EDガラスに多少の期待をしたが、おおよそ
AMに迫るものではなく、これはAMも同様であるが絞込みから生じる解析現象もかなり出る。これを思うとフジノンAは、開放時では、AM等に見
劣りするものの実写では引けをとらないことが判明。しかもシュナイダーは、この後、本当の意味でAMニッコールの対抗としてマクロジンマーを出し
てきた。結果、そのレンズも買うことになるが、それにしてもその後の本庄の歯切れが悪い。当然といえば当然である。
ちなみにこのスーパージンマーはとても重く、フジノンW360よりまだ重い。俯瞰撮影が多かったせいか、ことごとくマンフロット製の雲台が締まらな
くなり、ジッツオに換える羽目になった。