Nikon SP
 時価換算して最高級といわれるのが、ニコンSPと言われる。一時期、新宿
の中古カメラ店で極上、ブラック、箱つき1:1.1標準レンズで100万円以上
の価格が付けられていた広告を見た記憶がある。日本のカメラメーカーが、
ライカを模造している中で、打倒ライカを掲げ、ライカM3に最も接近したカメラ
でもあった。バルナック型ライカの時代、多くのメーカーがライカコピーを行なっ
ていたのに対しニコンは、コンタックスをお手本とした。マウントは無限位置で
のフランジバックが僅かに違うものの、コンタックスそのもので、結果、それが
小口径マウントという欠点となり、悩むことになる。ヘリコイドがボディに組み込
まれ、標準レンズなら問題ないが、広角や望遠となると、ボディ側のヘリコイド
を覆い被せるように、レンズのヘリコイドと連動するという、複雑なメカニズムと
なっている。ただボディ右にあるピント連動ギアーは、物陰から撮影するにあた
り、ピントあわせで体を乗り出さずに済むことで、戦場では重宝したと言われる。
もっともこれもコンタックスのコピーであるが。
 SPの系譜はニコンI型から始まる。いわゆるコンタックスコピーであるが、しか
し、それは外観上で中のメカニズムは、横走り布幕シャッター等、ライカに近い。
また、逸話として、いわゆるライカ判が、横長なので少し、長辺を短くして、印画
紙に合った比率にして、フィルムカット数も増やせるということから、「ニコン判」
というフォーマットを作った。これは、他の国産メーカーも同様な展開をしたが、
戦後、日本は占領下にあったことから、GHQより、禁止されたという。
我ら、皆兄弟    Nikon SP
 理由は、自動的にプリントする機械が、この頃既に存在し、ライカ判で作られていたことから、コマ送りが合わなくなるから米国では使えない、
ということだそうだ。ちなみに現在のコンパクトデジカメの一般的な比率は、「ニコン判」に近いものである。
 ニコンSPが、ニコン史上最高級カメラであるのだが、この前にニコンS2というモデルがあった。これが、当初のI型の流れから、ダイヤル式の
フィルム巻き上げで出す予定だったそうだが、その前に発売された、ライカM3が、バルナックから一変したモデルを出して、世界に衝撃を与え
た。発売を控えていたS2もこれに衝撃を受け、急遽、一部変更を余儀なくされた。しかし、短期間の割りにS2は、変更されて登場したカメラとは
思えない、一体感のある出来栄えであった。このスタイルが、SPへと継承された。SPは独自のファインダー構造を持って、より、多くのレンズ
に対応できるようになっていたが、レンズ交換で自動的にフレームが変わるライカに比べ、手動となっているのは多少の見劣り感がある。SPの
ファインダー機能を省略した、S3、更に省略したS4が登場したが、シャッター等、主だったメカはSPと同じであることから、信頼度の高いカメラ
といえるだろう。そして一番驚いたのが、世界を席捲した、日本のカメラメーカーを世界に押し上げた名機“ニコンF”は、SPのレンジファインダー
を取り外し、一眼レフ化したカメラであることだ。言い換えれば、SPのファインダー機能を究極に省略したカメラが“F”ということになる。
世界の名機は、白紙から設計されたのではなかったということだ。
したがって、SPは、M3に迫り、Fで抜き去った、と解釈するのは小生だけであろうか。
 小生が、SP(布幕シャッター)を手にしたのは、ニコンフラッグシップ機がF4の時代である。改めて、SPを手にするとシャッターの静かさは、M4
に迫るものであった。それにしてもかつて所有していた、Fとそっくりではないか。Fは良いカメラであったことは、歴史が証明しているが、しかし、
新製品としてFを手に取った人には、果たしてそれが新製品と感じられたのであろうか?車は、違う車種でも共通部品は多いことは知られている。
レンジファインダーと一眼レフの違いは、車で言うならFFとFR並みの違いであるのだが、それが、共通プラットフォーム上にあるということはある
意味、すごい事である。






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