35mmのどこが悪い   Ai Nikkor 300mmF2.8

 Ai AF Nikkor 300mm F2.8(所有二台目、本文はMF
 いわゆる「サンニッパ」と呼ばれる望遠レンズ300mmF2.8を
購入したのが、コマーシャルスタジオに勤めていた1984年のこ
と。当時の勤務先の社長から「俺だったらハッセルを買う」と言わ
れた。また注文したプロショップからも改めて「返品はききません」
と購入の意思確認の電話があり「失礼な」と思ったが、それだけ、
出荷が少ない時代であったことが覗える。そして86年に独立した
が、当時の機材は、ニコンF3とWISTA、ハッセル2000FC/M
はボディのみであった。この時代、米国では、35mmか8×10が
主流など言われ、信憑性の如何はありながらも35mmで仕事を
する考えで独立をした。しかし、意外にその壁は熱く、広告代理店
からの依頼は、殊更35mmを嫌うものがあった。
 勿論、35mmに比べ、それ以上のサイズを持つフィルムの方が
画質は良いに決まっている。ただ、その差が分かる使用サイズ、
或いは、機動力に勝る35mmでないと撮れない表現があるのも
事実であることから、小生は、その部分を主張しながら、35mm
で押し通した。しかしながら、単に仕上がりの違いよりも中には、
クライアントに対する面子で35mmを嫌う代理店(の担当者)がい
た。要するにクライアントの子供などが持っているカメラ(35mm)
で仕事をしていたのでは示しがつかない、というものである。
 くだらないと思う話であるが、その立場になると気持ちも分からないでもない。そこで35mmならではの写り、かつ相手も納得するプ
ロ機材(後にはそうでもなくなったが)ということで重宝したのが“サンニッパ”であった。当時、カメラマン自身が35mmの性能を理解で
きず、その呪縛が解けていなかったせいか、このレンズで撮影する姿が、他のクリエイターやクライアントに斬新に映ったようである。
かくして、小生の35mm路線は理解されることになった。
 しかし、いろいろな機材を持ちたがるのは、むしろカメラマン側の性分で小生もご多分に漏れずそうであった。予算が大きく取れる仕事
が舞い込み、ついつい8×10を購入。まさに米国のフォトグラファー気分で35mmと8×10で北海道で撮影を行なった。このとき、生物
であったのだが、コダクロームを入れた35mmと35mmフィルム36枚撮りが全て乗せてべた焼きが出来るサイズの8×10を併用した
のだが、このときのディレクターが、またまた従来の概念に囚われない人物で、8×10の画質に感動しながらも35mmの表現の方が、
気に入ったようで35mmで撮影したカットをB全ポスターに使用した。仮に8×10も印刷し、比べれば画質に関しては一目瞭然の差が
あるものだが、比較が無い分、仕上がりに不満がなければそれで済むもの。というのも、このときの撮影に立ち会った代理店の営業マン
は、初めて目にする8×10に驚きながら、刷り上ったポスターを見て「さすが8×10ですね〜」と発言。35mmであることを教えてあげて
35mmの認識を改める機会になったようである。
 ちなみに、現在でのデジタル入稿についてピクセル数を限定して指示するところがあるそうだ。A4サイズでの印刷物を一般的とすると
一面全部を使ったとしても300dpiなら800万画素もあれば十分である。つまり、通常、1,000万画素あれば、大抵は問題ない。半面、
作業的に1.000万画素では大き過ぎて作業がしにくいともいえるのだが、この、入稿条件が最近耳にした話では、1,800万画素以上
、とか。そうなると現行、EOS1Dmk2以上ということになる。多分に認識不足の発注者と思われるが、デジタルになっても同じような感
覚の持ち主がいるものだ。




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