2000シリーズを使う訳  ハッセルブラッド2000FC/M他

 Hassel Blad 2000FC BODY
 コマーシャルスタジオに勤めていた頃のモデル撮影は、ハッセルブラッドが使われていた。小生は、自分が
担当することになった百貨店では、積極的に35mmを使用した。 単純に、その方が動きのある写真が撮れ
たからである。 とはいえ、スタジオでの撮影は、やはりハッセルが主流であった。しかし、このカメラは名機と
言われながらも、厄介なところがあった。 日本では、一般的に“ハッセル”といえば、レンズシャッターの500
シリーズが一般的であった。シンプルで丈夫であったことは、確かである。言い換えると、他に過酷に耐える中
判カメラが、無かったということでもある。 この頃は、ハッセルも2000シリーズを発売したが、なかなか認知
されなかった。 しかし、小生は、「ハッセルを持つなら2000シリーズ」とその頃から決めていた。
 では、500シリーズで厄介だったのはミラー切れである。ミラー切れとは、ファインダーを覗いたときに画面
全部が見えない現象で、一眼レフのミラーの大きさに余裕の無い作りに場合、特に望遠レンズを使用したとき
に生じる。絞り込んだ状態の方が目立つことから、開放値が暗いほど目立ちやすい。ハッセル500シリーズの
場合、ゾナー150mmF4C及びCFからその現象が生じる。また、マクロプラナー120mmの場合、Cレンズは、開
放F5.6であることからゾナー150mmよりも目立つ。比率が違うので一概に言えないが、ハッセルでの120mmは
35mmの70mm位であろう。その長さでミラー切れが始まる。 通常、スタジオでのモデル撮影は、120〜150mm
あたりが使用される。勤務先のスタジオも150mmを使っていたが、モデルの頭がミラー切れで見えない。 ヘア
ースタイルが、角度によって、変に立って見える髪型をヘアーメイクが作った。 これが、ミラー切れでその角度
であることに気付かなかった苦い経験がある。ロケなどで、ゾナー250mmF5.6を使った場合は画面の上部1/3が
見えなくなる。実質、モデルの顔が確認できなくなるわけだ。A16というセミ判サイズのフィルムバックがあるが、
これと90°のプリズムファインダーを使って縦位置で使用した場合は、ミラー切れがあっても支障は無い。 い
ずれにしても名機とされるハッセルが、これでは辛い。もう一点、ハッセルの問題点としてボディによる、内面反
射がある。小振りなハッセルは、ボディ内反射が起きやすいといわれていた。その後、解決されたが、この時点
では、このような問題を抱えており、実用面で不便さを感じざるを得ないことも持ち合わせたカメラである。
 そうした理由から、独立したときは、「2000シリーズ」と決めていた。もっとも、主力を35mmにする予定でいたので、中判を持つなら“2000FC”と考えていた程度である。
ただ、2000FCの価格はべらぼうに高い。当時、一般的なハッセル500CMは、レンズ、フィルムバックとの一式で30万円くらいであった。ボディだけなら18万くらいだ。 対して
2000FCは、ボディだけで45万円である。 その後、進化した最上級2000シリーズは一式で100万円を超えていたから、いかに2000シリーズが効果であるかが理解できる。
参考までに、この頃のニコンフラッグシップ、F3は13万円である。 それが、ある日、シュリロ正規品の新品ボディが、15万円で売り出された。 独立前の30代直前のことである。 
検討した購入した。 手に取った印象は、握った感じは、500シリーズと全く一緒。チタン幕フォーカルプレーンシャッター内蔵だけあって、シャッター音は、大きく品はない。それと
6×6サイズでフィルムバック交換のときにシャッター幕がむき出しなのは、恐ろしい。実際には安全機能が働き、シャッターを仕舞える機能を持っているが、バック交換ごとに、そ
れを行なうのは、結構手間である。 その後、より電子化された2000(200)シリーズは、布幕になった。一般にチタン幕の方が強度は高いが、中判サイズは、音も含め布幕が主
流である。 さて、2000シリーズの利点は、電子制御フォーカルプレーンシャッター内蔵のおかげで、シャッターが、ない代わりに明るいFレンズが使える。 また、Fボディ対応の
CFレンズを使用した場合でもカメラ側のシャッターが中間設定できるので、絞りを変えない露出設定もできる。 そして、なんといってもミラー切れがない。ミラーアップにスイング
構造を加え、ミラーの大型化を可能にした結果である。その後のハッセルは、多少の構造の違いがあるが、全てのカメラのミラー切れを解消した。 多重露光もボタン操作で可能
になった。35mmカメラでは一般的なことが、名機ハッセルではそれまで出来なかったのである。
 小生は500シリーズも何台か使用していたが、そんな訳で、主力は2000FC/M及び、201Fを活用していたのである。




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